Dr.luce
一花とクラルが患者に声を掛け、ストレッチャーから処置台へと移す。その間、ルーチェは衝撃のあまり動くことができなかった。否、ルーチェだけではない。アーサーとティムもその場に立ち尽くしたままだ。

そんな三人に対し、看護師のオーストラリア出身のオリバー・ホープとケニア出身のアルオチ・キバキが「先生!!」と大きな声で呼ぶ。

「何をボウッと突っ立ってるの!?まだまだ患者さん、搬送されてくるよ!!」

「一花とクラルから勉強するんだろ?早くこっちに来て!!」

アルオチとオリバーに言われ、ようやくルーチェたちの体が動く。ルーチェは血に塗れた患者にようやく近付くことができた。

「ここまで酷い状態の人を診るのは初めて?」

クラルの問いに「はい」とルーチェは大きく頷いた。こう話している間にも、患者の患部からは血が流れていく。

「救急ではこんな酷い怪我を診るのは当たり前だよ。でも、この救急科がないとこの人は助からないんだ。僕たちがこの人の希望であり、最初で最後の砦なんだよ」
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