極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
プロローグ
都内の片隅にある、ビジネスホテル。
昨夜は余裕がなくて気づかなかったけれど、室内は一般的な部屋よりもグレードが高いようだった。


シングルやセミダブルではなく、クイーンサイズのベッド。座り心地が好さそうな椅子に、シンプルだけれど洗練されたデザインのテーブル。


テレビと冷蔵庫も一般的な部屋のものよりも大きく、ビジネスホテルらしくなく室内にはまだ余裕もある。
そんな中、私――大森芽衣(おおもりめい)と幼なじみの香坂樹(こうさかいつき)くんは、沈黙に包まれていた。


ベッドに腰掛けている樹くんに座るように促され、一瞬考えたあとでその隣に正座する。すると、彼もベッドに乗り、私と向き合うように胡坐をかいた。


(えぇっと……どうしよう……。なにを言えば……)


頭の中では言い訳や色々な言葉が並ぶけれど、どれも安っぽいドラマのセリフのようで口にできない。
気まずさは相当なもので、きっと樹くんも困っているんだろうというのはわかる。


「まずは……ごめん」


ようやく沈黙が破られ、彼の声が静かな部屋に落ちた。

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