極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
「うん……抱いて」


私が答えてからベッドに移動するまでは、あっという間だった。
樹くんは私を抱き上げて寝室に向かうさなかにもキスを再開し、ベッドにたどりついたときにはお互いに息が乱れていた。


「ちょっと緊張するね……。両想いだってわかって、ドキドキしてるのかも……」


急に照れくさくなった私がためらいがちに笑えば、彼が困り顔で微笑んだ。


「今、そんな可愛いこと言わないで。俺、これでも結構ギリギリだから」


なにがギリギリか、なんて訊かなくてもわかった。
余裕がないのは私だけじゃないんだと思うと、照れくさいのに嬉しくなって……。樹くんのことが欲しいと思った。


「芽衣」


彼の声も、視線も、私を求めてくれている。
これまでに何度も体を重ねてきたのに、お互いの心が伴っているとわかった上での行為は、この上ない幸福感に包まれた。


吐息交じりに呼ばれる名前も、激しい蜜事で生まれる甘い熱も、惜しみなく注がれる愛の言葉も……。全部、全部、愛おしくてたまらない。


体だけじゃなく心から愛し合った私たちは、お互いの存在と想いを感じながら甘い夜に身を堕としていった。

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