極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
「芽衣にとっても、悪くない話だと思うよ」


きょとんとすると、樹くんが目を眇めた。


「まず、なによりもお互いをそれなりに知ってる」


なんだかおかしな方向に話が進んでいるのはわかるのに……。

「大人になってからは会う機会は減ってたけど、素性はきちんとわかってるし、今の性格も知らないわけじゃない。で、俺は海外にいることも多いから、芽衣は自分のライフスタイルをある程度は維持できる」

並べられていくメリットに、つい聞き入ってしまう。


「お互い、実家では肩身が狭い思いもしてるけど、そこからも解放される。親だって、俺たちの結婚なら賛成するだろうし」


思わず魅力を感じそうになったけれど、ふと冷静になって慌てて口を挟んだ。


「えっと、だからって……」

「見合いはしたくないんだろ?」


それなのに、痛いところを突かれて言葉が引っ込む。


「おばさん、本当に見合い話を持ってきそうな感じだったし」


しかも、彼の話には共感できる。母ならやり兼ねないとわかっているからこそ、私が頭を抱える未来が見えそうだった。

< 33 / 143 >

この作品をシェア

pagetop