極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
三章 唇に灯った熱
暦は四月に入り、一週間が過ぎた。


冬の寒さはすっかり和らぎ、満開だった桜も散っている。そんな中、私は十日ほど前から樹くんと同居を始めた。


広いバスタブに肩まで浸かり、あの夜からのことを反芻する。
この一か月半は、本当に怒涛の日々だった。


まず優先させたのは、両親への報告。


私のお見合いを回避するためにも、両親への挨拶を兼ねた報告は一刻も早く済ませておく必要があった。
彼は急いでいるわけじゃなかったけれど、私のために都合をつけてくれた。


両親の反応は、思ったよりもあっさりとしていた。
樹くんのおじさんとおばさんは大袈裟なほど喜んでくれたのに反し、あれほど口うるさく結婚を急かしていた母が意外にも落ち着いた様子だったのだ。


父はもともとあまり口数が多くないし、いつも通りと言えばそうだったと思う。
ただ、母はもっと喜ぶか、もしくは突然のことに驚くか疑われるか……と考えていたため、意外な反応に私の方が拍子抜けしてしまった。


ちなみに、双方の両親には『結婚を前提としたお付き合いを始めた』という前置きの上、早々に入籍することも告げた。

< 48 / 143 >

この作品をシェア

pagetop