初夜で妻に「君を愛することはない」と言った私は、どうやら妻のことをめちゃくちゃ愛していたらしい


 私を床に正座させ、その周りを囲んだ母と妹二人は、口々に私を罵倒しながら死を迫ってくる。

 ソファに座る父と弟達からは、「マイケル、流石にお前……」「兄さん、マジで最低だな」「あのステファニーさんでダメって、兄貴男色なの?」「兄さん、これはちょっとフォローできません……」と口々にドン引きコメントが漏れている。

「い、いやでもな。私は普段からこのぐらいのことは言ってた訳だし」

「結婚当日に言うなんて、兄様は頭がおかしいの?」
「そもそもお前、いつもそんな酷いことを言うなと散々言って聞かせていたというのに、母は情けない……!」
「新婚なんだから、例え政略結婚だったとしても、愛の言葉を囁くのはもはや義務でしょう。お兄様はそもそも、ステファニーお姉様にそういうの、言ったことある?」

 愛の言葉を囁く。

 言われてみたら、私からステファニーに何かこう、好意的な言葉を口にしたことがない。

 だ、だってだな、彼女は私が気を抜くと、すぐに私の背後や横から抱きついてきて、髪の毛をぐちゃぐちゃにしたり、持ち物を盗んでいったり、至近距離から可愛い顔で「ミッチー大好き♡」とか囁いてきたり、飲みかけのコーヒーを「間接キス!」と言いながら飲み干していったりするのだ。
 だから、これ以上好意が高まって行動がエスカレートしては敵わないと、私は彼女に常に素っ気ない態度ばかりしていた……。

「この反応、まさかの一度も……」
「兄様、最低よ」
「やはり死んでお詫びを」
「「母様は早まらないで!!」」

「マイケル君」

 頭が上がらない私に、背後から声がかかる。

 血の気が引く思いで後ろを振り向くと、やはりというか、スマイル侯爵が立っていた。


< 26 / 104 >

この作品をシェア

pagetop