初夜で妻に「君を愛することはない」と言った私は、どうやら妻のことをめちゃくちゃ愛していたらしい


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「大体、ステファニーお姉様、お兄様に甘すぎるのよ」
「そんなことないわ。私が勘違いしていたのが悪いのよ、マイケル卿は被害者なのだから」
「お姉様は悪くないわ! あのヘタレドブネズミが全部悪いのよ」
「まぁ、すごい呼び名ね」

 ここに来て二日目のカフェタイムに、義妹達はそんなふうにわたくしを慰めてくれました。
 わたくしからすると、義妹達はわたくしに甘すぎるように思うのですけれども……好意が嬉しくて、わたくしは力なく微笑みます。

「ねえねえ、ステファニーお姉様!」
「どうしたの? マリー」
「例えばね、マ・イ・ケ・ル・お兄様! のいる別邸に引き取られたエリザベス(猫)を弄んだり、苛めたりする奴がいたらどうする?」 

 エリザベスを?
 あの可愛さの塊、この世の宝石、空から舞い降りた天使を?

「処刑よ処刑! 絶対に許しませんわ。生きていることを後悔させてやりますわ……!」

「お姉様、そのぐらいの勢いで兄様もノしてやってよ」
「それは無理ですわ」
「断言が速い!」

 だって、マイケル卿ときたら、仕草も見た目も性格も、全てがわたくしの心を締め上げてくる、わたくし特効のまたたび酒みたいな存在なのです。ツンツンしながらもわたくしのいる部屋からは出て行こうとしない抜けているところとか、とってもキュートで、わたくしはもう十年以上もメロメロキュンキュンなのですわ。

 けれどもわたくしは、彼に振られた身。
 潔く彼のことを諦めねばならないのです。

 この身を引き裂かれるような辛さも、しばらく彼の顔を見なかったら落ち着くのかしら。
 そう思ってわたくしは、マイケル卿のいない本邸に身を寄せ、彼の面会の申出を拒絶し続けていたのです。


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