初夜で妻に「君を愛することはない」と言った私は、どうやら妻のことをめちゃくちゃ愛していたらしい


 冷や汗をダラダラ流しながら、顔を真っ赤にして必死の形相でこちらを見てくる様は、ときめきよりも驚愕しか生み出していません。笑いを通り越して、一体何が起こったのか、脳が現実を拒絶してしまうような光景なのです。
 本人はキメ顔をしているのかもしれませんが、緊張と羞恥で頰が引き攣っているので、無理をしている様が手に取るように分かります。

 わたくしは『もう耐えられない助けて!』と勢いよく侍従侍女達の方を振り向きましたが、彼らはぷるぷる肩を震わせながら『お願いこっちに振らないでください!!』と顔をぶんぶん横に振っています。

 こんな状態で朝食の味なんて分かりませんわ、わたくし一体どうしたらいいんですの!?

 しかし現実は残酷で、あっという間に朝食が運ばれてきてしまいました。
 ふと、カタカタ音がすると思ったら、朝食を運んでいる侍女の手がぷるぷる震えています。気持ちは分かるけれども頑張って!!

「ス、ステフ」
「はいっ!?」
「その……も、もしかしてこの部屋は女性には寒いんじゃないか?」

 侍女達は寒くて震えているんじゃありませんわぁー!?

 壁際から、いくつか「ブハッ」と息を噴き出すような音がしたかと思うと、数人の侍従と侍女が部屋を走り去って行きました。
 執事が、「後で教育し直さなければいけませんね」と涼しい顔をして呟いています。
 優しくしてあげてくださいまし!?
 若い侍従侍女にこの空間は酷だと思いますの!!

「ステフ、その、手を出してもらってもいいか」
「どうぞ!?」
「や、やはり冷たいな。私は今暑いくらいだから、こうして準備が整うまで、わた、私が温めてあげよう」

 差し出した右手を包み込むように大きな手に握られて、わたくしはドキドキする余裕もなく、驚愕でまたしても口をカパっと開けてしまいます。

 驚きすぎて血の気がひいているわたくしの手は冷たいかもしれません。
 けれども、そんな真っ赤な顔をしてじっとり汗ばんだ手が震えているあなたは高熱患者のようですわ!!

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