筒井くんと眠る夜 〜年下ワンコ系男子は御曹司への嫉妬を隠さない〜
優しくて意地悪
「案外消えるの早かったな」
筒井くんが私のデコルテを見てつぶやく。筒井くんの〝印〟はもうほとんど消えている。
「今日で最後かな」
「え?」
「消えるまでって約束だったよね」
「あ……そっか、そうだった」
この印をつけられてから、筒井くんは毎日うちに来て私を抱きしめて眠ってくれたから、きっとわかりやすく肩を落としてがっかりした顔をしてしまったと思う。
「さみしい?」
クスッと笑って聞く筒井くんの問いに、必死に首を横に振った。さみしいなんて言っていい立場じゃない。
「素直じゃないな、小夜ちゃんは」

今夜で最後。
いつかは最後がやってくる関係だってわかってたのに、こんなにあっさりとその時が来るなんて思わなかった。自分でそうしたくせに、感傷的になっている自分に呆れる。
いつもは筒井くんに背中から抱きしめてもらって眠っているけど、今夜は彼の方に身体を向けた。
「今日、抱いて欲しい」
「小夜ちゃんからそんな風におねだりされるなんて嬉しいな」
筒井くんは静かに笑って言った。
「でもダメだよ」
「どうして?」
「最後に抱かれて思い出にしようとしてるのが見え透いてるよ。ほんと、狡くて残酷だな」
そう言った筒井くんは私を抱き寄せて、ギュッと抱きしめて、額にキスして、それから髪を撫でた。
抱かないくせに、私が忘れられないようにわざと優しくしてるよね。私が狡くて残酷なら、筒井くんは優しくて意地悪じゃない。

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