筒井くんと眠る夜 〜年下ワンコ系男子は御曹司への嫉妬を隠さない〜
最後の夜
お昼は遊園地でハンバーガーを食べた。
ゲームで遊んだり、チュロスを食べたり、いわゆる普通の中高生がしてるみたいなデートを筒井くんが教えてくれる。
私が経験できなかったことを。
夕飯はきっと、ラーメンとか……そういえば前に焼肉に連れて行ってくれるって言ってたっけ。

「夕飯の前にちょっと寄り道」
タクシーの後部座席から、筒井くんが行き先の指示を出す。
「え、ここ?」
彼がタクシーを止めたのは、高級メンズアパレルショップだった。
「この格好だとさすがにマズいから。小夜ちゃんはちょっと待ってて。」
パーカーだとマズい? ラーメンでも焼肉でもないのかな。一人残されたタクシーの中から、街を行き交う人たちを見て夕飯を想像する。
十五分くらい待って少し眠気に襲われ始めた頃

「お待たせ」
一気に眠気が吹き飛んだ。

ズボンはさっきまで履いてたのと同じだけど、上半身が急に別人。濃紺のテーラードジャケットに白いシャツ、前髪も少し上げていて、とにかく急に大人の男性が現れた。
「筒井くん……だよね?」
「何言ってんの?」
笑った顔も声も確かに筒井くん。心臓がさっきまでとは別のリズムを刻んでいる気がする。
誰? って感じ。あのお店、高いはずだけど行き慣れてる感じだった……?
頭の中が〝?〟で埋め尽くされ始めている。
「夕飯って?」
「もうすぐ着くよ」
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