月夜に1人の私を見つけて
本編

満月―まんげつ―



「今日はごめん、雪奈。元気でな。」


「ううん、謝らないで。…怜も、元気でね。」


改札を出て、歩道に繋がる階段を降り切った後、
雪奈は、彼氏…今は『元』彼氏の怜に手を振った。



──これで最後なんだから、できれば気持ちよく別れたい。




そう思って、精一杯がんばって顔に貼り付けた笑顔。



──怜には、私はどう映ってるんだろう。




じゃ、と言って手を挙げた彼は、手を降ろすと
さっさと歩いて帰ってしまった。



振り返らない彼の背中を、雪奈はしばらくの間、呆然と見つめていた。



なんて呆気ない最後。


約2年半。長いようで短いような交際期間。


…いや、決して短くはない。


社会人になってからの2年半は、結婚を望む自分にとっては貴重な時間だった。


雪奈は年明け1月に25歳になる。

25歳になったら、結婚したいと思っていた。

その結婚相手は、もちろん怜だと、信じて疑わなかった。


…なのに。

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