世界で一番好きな人
昔から、頼み事を断ることが苦手だった。


断って揉めるくらいならやっちゃえばいいだけの話で、それを苦だと思うこともなかったから別にいいんだけど。



「…村井さん?」



黙々と掃除をしていると、扉に寄りかかるようにしていつの間にか男子生徒が立っていた。


見たことがない顔だから…他クラスの子だろうか。



「さっきすれ違った女子達が話してたよ。村井さんに頼めばなんでもやってくれるから楽だーって。君が村井さん?」


「…そうよ。私が頼めばなんでもやってくれる村井さん」



男子生徒はぽかーんと私を見つめてから、吹き出した。



「あはは、面白いね、村井さん。ねえねえ、下の名前はなんて言うの?」


「梓だけど…って、なんであなたまでほうき持ってるの?」


「ん?二人でやった方が早いでしょ。それに、俺も頼まれたら断れないタイプだよ」
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