ユーとリーのほのぼの日記

第2話 ままごと

 モンシロチョウが飛んできました。 花を探しているようですね。
ユーとリーは暖かい日が差す中でポカーンとそれを見詰めています。 辺りに物音はしません。
気が抜けるほどに静かな昼下がり。 リーはモソモソしながら暇を持て余しているようです。
 「ねえねえ、ままごとしない?」 「ままごと?」
「あんまりに暇だからさあ、、、。」 「いいけどどうするの?」
「私がママで、、、ユーはねえ、、、、、、女の子。」 「私って女の子だよ。」
「そうじゃなくてーーーーーーーーーーーー。」 「分かった分かった。」
 というわけで二匹はへんてこなままごとを始めました。

 「ユーちゃん、ご飯よーーーー。」 「そんなに大声で呼ばなくたって聞こえてるってば。」
「ごめんごめん。 また寝てるかと思って、、、。」 「リーじゃないんだから。」
「今はママよ。」 「ごめん ママ。」
 リーは葉っぱのお皿を持ってきました。 そこに少しだけ土を盛ります。
「さあ食べてね。」 「はーい。 いただきまあす。」
葉っぱのお皿を口に運ぶユーを見ていたリーは目が点になりました。 「うん。 美味しい。」
「え? それって土なんだけど、、、。」 「意外と美味しいじゃん。」
そう言いながらユーは二つ目を口に、、、。 その時でした。
「ダメーーーーー!」 リーがいきなり大きな声を出しました。
「何? 何?」 全部を飲み込んだ後でユーは不思議そうな顔でリーに聞きました。
「何ともなかったの?」 「別に、、、。」
「今さあ、カタツムリまで一緒に飲み込んじゃったのよ あなた。」 「えーーーーーーーーーーーーー! 何で早く言わないのよーーーーーー?」
「だって、、、言おうとしたら飲み込んでたんだもん。」 「ゲーーーーーーーー、虫まで飲んじゃったあ。」
ユーは真っ青な顔で転がり続けています。 時々は水をがぶ飲みしてまたまた転がり続けます。
そして何かを吐き出そうとしているのですが、なかなか出てきません。 しまいには気持ち悪くなって泡を吹き始めました。
「どうしようもないんだから、、、まったく。」 「そうは言うけど、リーだって、、、。」
「ユーは食いしん坊なのよ。 食べられると思ったら何でも食べちゃうんだから。」 「しょうがないでしょう。 こんな風に生まれたんだから。」
「お母さんに会ってみたいわ。 どんなお母さんなんだろうねえ?」 「いいからいいから。 今日のことは忘れよう。」
「まったく、、、都合がいいんだからねえ ユーは。」 二匹が空を見上げるとヒバリがサーっと飛んでいきました。
 何をやってもやんちゃなユーと物静かなリーのコンビはもう2年目。
相変わらずのおてんばなユーに手を焼きながらリーは物思いに沈むのでした。
 その夜、珍しくおじさんがハウスを覗きました。 「ユー、ユー、おじさんだよ。」
「分かってるってば。」 「だったらさあ、、、。」
「おやおや? お前たちどうしたんだ?」 おじさんは優しく聞いてくれますが、、、。
 リーは何とも言えない顔で見ているだけ。 ユーは尻尾を振りながらおじさんに飛び付いていきました。
「おー、可愛いなあ。 ユー。」 「ったくもう、、、私をハラハラさせておいてあれなんだから、、、。」
あんまり、じゃれついたりしないリーはユーに妬いてばかり。 「あんたも飛び付けばいいのに、、、。」
「そうは言うけどねえ、、、私はあんまり好きじゃないのよ。 じゃれついたりするのは。」 「またまた、、、そんなにかっこつけちゃって。」
「かっこつけてなんかないもん。 ユーとは違うんだもん。」 「膨れたって可愛くないぞーーー。」
「いいんだもん。 私は可愛くなくたっていいんだもん。」 「妬いてるなあ。」
「妬いてなんかないもん。 ユーみたいにカタツムリまで食べたりしないもん。」 「それは言わないでーーーーーー。」
「じゃあ、ユーだって妬いてるのなんのって言わないでよ。」 「ごめんごめん。 分かったからさあ、、、。」
 そう言ってユーはリーの更に自分の餌を少し分けてやりました。 「いいよいいよ。 そこまでしなくても、、、。」
「いいんだ、、、何か今日はさあ、食欲が無くて、、、。」 「調子悪いの?」
「悪いのは頭だけだよ。 でもね、、、。」 「んもう、、、真剣に聞いてるんだから答えてよ。」
「ごめんごめん。 なんか疲れちゃって、、、。」 「転がり過ぎよ。 あんなにゴロゴロやったって疲れるだけじゃない。」
「それもそうだなあ。」 ユーはぼんやりと裏木戸を見詰めています。
家の中ではおじさんたちが楽しそうに夕食を食べています。 「羨ましいなあ。 あたしもいつか、、、。」
ユーはそんなことを考えながらいつかハウスの中で寝てしまいました。

 翌日、、、。 「今日はさあ、ユーがママになってよ。」
リーがごそごそしているユーに声を掛けてきました。
「あたしがママ?」 「そうそう。 昨日は私がやったから。」
「めんどいなあ。 もうやめようよ。」 「いいじゃない。 ユーのママぶりも見てみたいの。」
「そんなに見たい?」 「うん。 危なっかしいとは思うけど。」
 ってなわけで今日はユーがママになるようですね。 「ご飯よ ご飯よ。」
ユーはリーの耳元で囁いています。 「んもう、くすぐったいよーーーー。」
「いいじゃない。 ギャーギャー騒ぐよりは。」 「それって嫌味?」
「じゃないけどさあ、はい、ご飯。」 「いっただっきまあす。」
リーは葉っぱのお皿に載っているドッグフードをパクり、、、。 「うーん、何とも言えない味だなあ。」
「どういう意味よ?」 「だから何とも言えない味だって。」
「まずいってこと?」 「まずいわけじゃないんだけどさあ、美味しくも無いんだよなあ。」
「はっきり言うわねえ あなた。」 「うん。 リーは子供だから。」
「こんな時だけ子供になるのね?」 ユーはそっぽを向いてしまいました。

 リーはドッグフードを齧った後、水を飲みに行きました。 「ああ、すっきりした。」
ハウスに帰ってくるとユーは不貞腐れたように寝ていました。 「もう寝ちゃったのね? 面白くないなあ。」
どうやらユーを弄っていたほうが面白いようですね。 リーはなんだか落ち込んでしまって散歩に出掛けました。
 ブラブラと歩いていると昨日見掛けた猫が走ってきました。 ものすごい勢いです。
「あ、あ、あ、あ、あ。」 リーが戸惑っているとその猫は台風のように走り去っていきました。
「危ないなあ、もう。」 リーはまた歩き出します。
すると数匹の野良猫が近付いてきました。 「よう、可愛いじゃない。 遊ばないか?」
「でも私、、、。」 「いいじゃん。 ちょっとだけだよ。 遊ぼうよ。」
リーは振り切ろうとするのですが、野良猫たちはさらに追い縋ってきます。 「面倒だなあ。」
ボソボソ言いながら逃げていると野良猫たちも怒り出したようです。 「てめえ、優しく誘ってりゃ逃げやがってよ。 許さねえぞ!」
本気で野良猫たちが飛び掛かってきたものだからリーもどうしていいのか分かりません。 「キャーーーーーーーーー!」
出来るだけの大声で叫びました。 でも、、、。」

 その頃、ユーはハウスの中でゴロゴロしていたのですが、寝返りついでにハウスから転がり出てしまいました。
「いてててて、、、。 あれ? リーは?」 ハウスの中を覗いてもリーは居ません。
「散歩にでも行ったかな。」 そう思いながら水を飲んでいると、、、。
リーの悲鳴が聞こえてきました。 「何だ?」
耳を澄ましてみると野良猫たちの声も聞こえたような気が、、、。 「危ないぞ。」
 庭を飛び出したユーは一目散にリーを探しに出ました。 「これはリーの匂いだな。」
鼻をクンクンさせながら突っ走っていきます。 無我夢中で飛び込んでみると、、、。
勢い付いていたユーは野良猫の一匹を弾き飛ばしてしまいました。 「何だ、こいつ?」
恨めしそうに白猫がユーに近付いてきたので、ユーは思わず顔に噛みつきました。
「いてえなあ。 何すんだよ?」 「リーを虐めたらあたしが許さないからね。」
「へ? お前なんぞに負けるかってんだ。」 「じゃあ、やってみる?」
何だか今日のユーはいつもと違いますね。 「あたしねえ、こう見えても強いのよ。」
「お前が俺に勝てるってか? 笑わせるなよ。」 「笑ってるのは私のほうよ。」
「なんだと?」 白猫は我慢できなくなって飛び付いていきますが、、、。
ユーは寸前のところで身を交わしました。 「ギャーーーーー、止めてくれーーーーー!」
ユーに交わされた白猫はそのまま崖から滑り落ちてしまいました。 それを見ていた斑の猫は怖くなったのかさっさと逃げ出してしまいました。

 「かっこ良かった。」 「は? 変なこと言わないで。」
「だってだってだって、、、。 ユーはあたしの命の恩人だもん。」 「だからさあ、変なこと言わないで。」
「何でよ?」 「あたしだってどれだけ怖かったか分かってないでしょ?」
「うん。」 「ダメだこりゃ。 早く家に帰ろう。」
「そうだね。 お腹も空いちゃったし。」 「またご飯か。」
「いいじゃない。 私にはご飯しか無いんだから。」 「それもそうだ。」
「どういう意味よ?」 「そういう意味よ。」
「ああ、待て! こらーーーーー!」
 いつもいつもヘンテコなリートユーですが、今日もまた夕日の中で追いかけっこをしているようですね。
ほんとに仲がいいのか悪いのか、、、?



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