淫夢でも溺愛されたい! 〜サキュバスは隣人にガチ恋する~
ナンパ
翌日の麻里奈はなにかを決心したかのように鋭い表情を浮かべ、それに似合ったメークをほどこしていた。
「どうしたの麻里奈。清楚系になったんじゃなかったの?」

鏡台の前で戸倉瑞樹と出会う前のメークをしている麻里奈を見て、鈴子が驚いた声をあげる。
それに、今日はとっくに戸倉瑞樹がでかける時間も過ぎていた。

「今日だけは許して」
鏡越しに麻里奈が懇願するように言う。

その顔はとても苦しそうに見えて鈴子は眉を寄せた。
「やっぱり体調が悪いの?」

「そうじゃないの。でも……私このままじゃサキュバスとしてダメになる」
「え?」

それ以上の説明はしなかった。
すれば、昨日アニメで感動して泣いたのはなんだったのだと、攻められるのがわかっている。

だけど麻里奈だって嘘をついているわけじゃない。
自分の感情と自分の血が矛盾していることに、一番苦しんでいる本人だ。

「それじゃ、行ってきます」
言葉少なに麻里奈は家を出たのだった。
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