祝福のキスで若返ったかつての英雄に、溺愛されることになった聖女は私です!~イケオジ騎士団長と楽勝救世の旅と思いきや、大変なことになっちゃった~
 周囲を見回しても一人だけやたらと長いマントを羽織っているし、絶対この人が噂の騎士団長だと思う。

 ……まあ、この人がそう言うなら、私も彼の顔を立てて怒りを収めてあげようかしら。

 女の子の行動の基準なんてそんなもの。好みの顔は罪深い。

「あのっ……もしかして、騎士団長様ですか? 私は朝倉由真(あさくらゆま)です。この旅は四回目のベテランの貴方が居るから、絶対大丈夫って聞いています。これからどうぞ、よろしくお願いします」

 私が名乗りつつ挨拶に頭を下げれば、彼は苦笑して胸に手を当てて地面に膝をつきつつ頭を下げた。

「光栄です。私は討伐隊を務めます第一騎士団を任された、ジュリアス・アルジェントと申します。聖女様。どうぞ、今回の旅のお付き合いをよろしくお願いします」

 この時の私はせっかく名前を名乗ったのに、わざわざここで聖女様と呼ぶからには、何か理由があるのかもしれないとは、一瞬だけそう思った。

 けれど、産まれて初めて跪いた騎士に手の甲にキスする振りをされてしまって、(これが!! 本物の騎士様なのね!!)と、心が浮かれて空高く舞い上がってしまい、そんなことはすぐにどうでも良くなってしまったのだった。


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