イケメン過ぎる後輩くんは、可愛い先輩を甘やかしたい。





「ごめんなさい。やっぱりお付き合いできません」


 それは映画館から出て、様子のおかしい私を心配した依澄くんがそこで休もう、と非常階段のベンチを指さした時だった。

 私は思ったより冷静にその言葉を口にしていた。

「……なんで」

「……」

 返事をせず俯く私に、依澄くんが近づいた。

「先輩、俺のこと好きですよね」

「……」

 そして私の右手に触れる。

 その手つきの優しさに、胸がギュッと切なくなる。
 
「ははっ、凄い自信……」

 覚悟が揺らいで、声が震えた。

「自信とかじゃないです」

 頬に両手が添えられて、グッと上を向かせられる。

「先輩のことならなんでもわかるだけです」

 すぐそこの依澄くんの切ない目が、私の目の奥の、さらにその奥を見ようとする。
 
「っ……、」

 見透かされるのが怖くて、急いで依澄くんの手をはらって背中を向けた。
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