恋と呼べなくても
 


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 日向(ひうが)(なお)にとって、放課後の教室ほど安らぎと孤独を感じる場所はない。できることな残りたくはないが、他に行くあてがあるわけでもなく。窓の外を走る陸上部員——。もうすぐ大会だ。彼らのように心血注ぐものがあればよかったのに。気がつけばもう高校三年生。打ち込むべきことといえば受験勉強くらいか。しかし進路すら決まっていないのに、目標もない状態で何をどう頑張ればいいのか。
 はぁ……と、直はため息をついた。すかさず友人三人の視線がとんできた。

「あ、ため息なんかついちゃって。運が逃げてくよ」と美結(みゆ)に指摘される。

「わかった。陸部の青木くん見てたんでしょー。彼氏いるくせに、この浮気者ー!」と真希(まき)が校庭に目をむけた。

「陸部のエースで成績もトップ。おまけに眉目秀麗って完璧すぎない? あぁ、なんていうか。罪だわ」といって、優香(ゆうか)は机に座った。

「あれ、そんなセリフ今朝みた」
 そういって美結は、スマートフォンの画面を皆に見せる。
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