初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
 ドクンと心臓が跳ねた。もしかして、知られてしまった。

「君は、イアン・ダリルと婚姻関係にある。結婚をしている女性が、夫と異なる男性と身体を重ねた場合、それは姦通罪となる」

 だから、誰にも知られないようにとしていたのに。どこから情報が漏れたのか。

「ふむ。どうしてばれたのかという顔をしているな? 君が、イアンを利用して、彼に結婚を迫った頃から怪しいと思っていたのだよ。そもそも、カーラ商会は犯罪の温床ではないかと言われていたからね」

 うまくやっていたはずなのに。

「ケイト……。よくも俺を利用してくれたな」

 その声を聞くのは、三ヶ月ぶりだ。夫のイアンの声。

「気がついたら、君と結婚をしていた。俺にはその前、二ヶ月間の記憶が曖昧だ」

 ケイトはぎりっと唇をかみしめる。隣のラッシュは掛布をたぐり寄せて、身体を震わせている。

「君たちがイアンを狙っていたのは知っていたよ。彼が私に相談してくれていたからね。どうやら、カーラ商会に狙われているようだと」

 マレリの声が静かに響く。

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