初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
 この国では、商売で成功した者は貴族と同等の権力が認められている。つまり、金があるからだ。
 だから、イアンとケイトの婚姻が成り立った。この婚姻が双方の家にとって契約的なものであると理解している。
 それでも喉の奥がつかえるような感じがするのは、イアンに恋人と呼べるような女性がいたためだろう。彼は恋人と別れ、ケイトと結婚をした。

 だが、どこか彼からの愛情を期待していたのも事実。それが夫婦というものなのだろうと。

 イアンは王宮に務めている。
 家柄のよい令息令嬢は、王宮に出仕しながら礼儀を学び、出会いを見つける。結婚後は辞める者も多いが、家のことはすべて父に任せているイアンは、そのまま出仕を続けると言っていた。
 ようは、ケイトと顔を合わせたくないのだ。もしくは、そこで恋人だった女性に会いたいのか。

 イアンが、恋人であった彼女と出会ったのは王宮だと聞いている。さらに、結婚を約束した仲であったとも。
 だからなのかもしれない。あれ以降、彼の姿は見ていない。


 ケイトがイアンと結婚をして一か月が経った。
 彼は王宮で寝泊まりをしていて、屋敷(ここ)には帰ってきていない。
 屋敷で働く使用人たちが、ケイトを腫物でも扱うように接しているのは、それが理由でもあった。

 そんななか、侍女のナナは、ケイトが嫁ぐにあたって父親がつけてくれた使用人である。
 彼女はカーラ家でも、ケイトの身の回りの世話をしていた。
 知らない人ばかりがいる屋敷で、一人ぽっちにならずにすんでいるのは、間違いなくナナのおかげだ。



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