初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
3.
     ~*~*~*~*~


 空が青く、風が心地よい。さわりと揺れる花々が、かすかに甘い香りがふんわりと流れる。
 ケイトは東屋(ガセボ)でラッシュとお茶を飲んでいた。
 彼は二人の噂を聞きつけ、心配になって屋敷にまで足を運んでくれたのだ。

「ケイト……イアンとの関係は、その……」
「いいのよ、そんなに気を遣わなくて……」

 二人の関係が冷めきっているなど、一目瞭然だろう。
 イアンはあのときの責任をとって、ケイトと結婚をしたのだ。これが、ダリル家の恐れている醜聞でもある。
 あの場を丸く収めたのは、ラッシュの力も大きく働いていた。

「私も旦那様も、なんとか面目だけは保てているから」
「だけど、この国では簡単に離縁はできない……。君は、こんな生活を何年も耐え抜くというのか?」
「仕方のないことでしょう? これはお互いの家同士の契約のようなものだから……。それに、あれは私が失敗してしまったようなものだし……」

 ダリル家はすぐさまカーラ家に使いを出し、ケイトを次期当主の妻として迎え入れたいと一報を入れた。カーラ家にとって断る理由などない。たかが商人の家に、名門侯爵家のほうから妻として望まれているのだから。
 むしろ「よくやった」と、父親からは褒められた。

< 7 / 27 >

この作品をシェア

pagetop