愛でられて、絆される
「………」
絆奈が固まっている。

「絆奈?絆奈ー?聞いてる?」

「………あ…う、うん…
そ、そう…な…だぁ……」
あまりのショックで、言葉にならない。

「ごめんね。
昨日、急に決まっちゃって……」

「う、ううん。仕事だし…」
絆奈は、自分自身に言い聞かせるように言った。

「絆奈、大丈夫?」

「大丈夫、大丈夫!」
絆奈は、必死に笑って那王を見つめる。

「………」
那王は無言で見つめ返し、両手を広げた。

「え?」

「僕は寂しいよ?
だから、ギュってしよ?」

「………」
絆奈は頷き、抱きついた。

そして絆奈の肩に顔を埋めた那王が、切なく呟いた。
「我慢、しないでよ。
もちろん、だからって出張をどうにもできないけど、僕に言葉をぶつけてくれていいんだよ?」

「うん…
じゃあ、今日はずっとくっついてるね。
ウザいくらいに(笑)」

「うん!
僕も、ウザいくらいに愛でるから!」

いつものように(いや、いつも以上に)絆奈にキスを繰り返す、那王。
絆奈はそのくすぐったさや優しさ、温かさのある那王愛撫に酔いしれていた。


ほぼ一日中くっついて過ごし、あっという間に夜になった。

「━━━━━絆奈、寝ていいよ?」
ベッドに抱き締め合って眠っている二人。

絆奈は目がトロンとしていて今にも眠そうなのに、必死に目をこじ開けていた。

「いや、先に那王くんが寝るのを待ってるの」

「どうして?
いつもは、気持ち良さそうに寝るでしょ?」
ゆっくり頭を撫で言う、那王。

「もったいないから…」

「もったいない?」

「明日からしばらく那王くんの顔見れないでしょ?
たった五日間なんだけど、寂しいなって思って。
だから今ギリギリまで見ておこうかと」

「………フッ…!!」

「え?」

「フフ…ハハハーーーッ!!」
噴き出し笑い出す、那王。
腹を抱えて、目尻に涙まで溜めている。

「そんな笑わなくても……」

「だって!可愛いこと言うなぁーと思ってさ!」

「……/////」

「ほんと、可愛いね!絆奈って!
ずっと頭撫でてるから、寝なよ!
僕は、絆奈が腕の中で安心して眠ってる姿を見るのが幸せなんだ!
信頼されてるってことだし、僕しか見れない絆奈の無防備な姿でしょ?
なんかね……独り占めしてるみたいで、ほんと幸せなんだ!」

「そっか…/////
じゃあ、お言葉に甘えて寝ようかな…/////」
「うん!おやすみ!」

那王が更に抱き締め、額にキスを落とし、ゆっくり頭を撫でた。
次第に━━━━絆奈が眠りについて、その寝顔をしばらく幸せな気持ちで眺め、那王も眠りについた。

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