愛でられて、絆される
悲しい過去
ちょうど一年前━━━━━━

絆奈は、ストーカーに悩まれていた。

「ストーカー!?」
那王が目を見開いている。

「うん…」
絆奈は、もう一度深呼吸をして話を続けた。

「相手は、FLOWER AVEに来てくれたお客さん。
元々は、彼女さんにプレゼントする花束を買いに来てくれた人なの。
でもね……上手くいかなかったみたいで、落ち込んでて……」

「それを、たまたま見かけた一橋が慰めたんです。
それであいつ、一橋に好意を持つようになって……」

「最初は、定期的に花束を買ってくれる程度だった。
私を指名してくれたから、私も張り切っちゃって。
しばらくして、お茶に誘われたの。
一度だけ一緒した。
……………それが、引き金みたいになった」

「それからあいつは、毎日のように店に来るようになったんです。
お茶に誘って来たり、映画とか、どこでも調べたのか知らないが、一橋の好きなブランドのイベントとか……
ついには、家にまで来るようになったんです」

「………」
絆奈と島山の話に、あまりのショックで那王は言葉が出ない。

「先輩や、岸峰さんにも“はっきり断った方がいい”って言われて、はっきり言ったの。
“もう、やめてください”って」

「その言葉で、あいつのストーカー行為が酷くなって……
一橋、実家暮らしだったから、一橋の両親の職場にまで行って“彼氏です”って挨拶したり、店でも彼氏面して俺達に話しかけてきたり。
電話やメールも凄かった。
番号変えても、変えても、つきとめて……」

「だから先輩が毎日、私を送り迎えしてくれるようになったの。
休みの日も、実家から出ないようにして、絶対に一人にならないようにした。
━━━━━━そしたら、あの人……」

「俺に敵意を持つようになって。
まぁ、そうなるように俺が仕向けたんだが……
ある日、あいつがナイフを持って俺のところに現れたんです」

「それで、先輩は腕に大きな傷をおったの」

島山が来ていた服を脱いだ。
左腕に、大きな傷痕が残っていた。

「まぁ、それであいつは警察に捕まって今は刑務所です。
刑務所出てからも、一橋や俺達の前には現れないように監視されることが決まってます。
でも、一橋の中ではそれがトラウマになってて。
だから一橋はずっと実家暮らしで、この四日間も一人でいることを避けてたってわけです」

「そう…だった…んだね…」
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