赤金の回廊 ~御曹司に恋した庶民令嬢は愛に惑う~
「あいつを落としてくれ。千枝華につきまとって困っていたんだ。報酬ははずむ。ついでに、王冠物語は俺が買い取るからそれも払う」
「律儀だね」
 大和はくすくすと笑う。
「それならクリスマスにふるところまでセットにしてもいいよ。最悪のシチュエーション、意趣返しにはピッタリじゃない?」
「いい性格してるな」
 将周はあきれた。言外に依頼人を暴露しているのもわかってやっていることだろう。
「どういう筋書きにしたものやら」
 楽しそうに大和は言う。
「いくらでも作れるんだろう? 依頼を受けたときに惚れたとか」
「頭まわるね。君も別れさせ屋やってみない? そのルックスといい、向いてるよ」
「やるわけないだろ。俺は一筋だから」
 将周の返答に、また大和は笑う。
 その後は事務的な話をして電話を切った。
 次にきた連絡がついさっきの完遂の報告だった。
「どうしたの、心配なことがあるの?」
 気遣う声に、将周は思考から戻った。千枝華が彼の顔を覗き込んでいる。
「逆だ。もう何も心配することはなくなったんだ」
 将周は優しく微笑みかける。
「千枝華、愛しているよ」
「私も」
 千枝華はうっとりと将周に答える。
「覚悟はいい?」
 言われて、千枝華は静かに頷いた。顔が赤いのはシャンパンのせいばかりではない。
 将周は千枝華にゆっくりと唇を重ねる。
 ツリーのイルミネーションが星のようにまたたき、二人を優しく包み込んだ。
 真っ白な雪が聖夜を静かに彩る。
 二人の長い夜はまだ始まったばかりだ。
 
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