ムラマサ! ~道端でちょっとめんどくさいイケメンを拾いました~


 職場の呑み会後、そっと帰ろうとしていたあやめは、夜の街で、たまたま目が合った、妙な男に絡まれてしまった。

 すぐ側のバルの灯りに照らし出される綺麗に整った顔。

 ダーク系のスーツがよく似合う品の良い物腰。

 背の高いあやめより、更に背の高い彼は、上からあやめを見下ろし、唐突に、こう言ってきた。

「お前、俺を雇わないか?」

 いや、なんのために――?

 ボディガードとかいう、(いか)つい雰囲気ではなく。

 執事みたいに、誰かに仕えるという感じでもない。

 というか、(にじ)み出すこの偉そうなオーラ。

 こんな人、雇ったら、私の方が使われるに違いない、

 そう思いながら、あやめは、ぼんやり、その男を見上げていた。

 酒のせいで、ぼんやりしているわけではない。

 普段から、ちょっと、ぼんやり。

 無気力そうだと、みんなには言われる。

 いや……別に無気力なわけではなく。

 ただただ、マイペースなだけなのだが。
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