俺に夢中になれよ~純情秘書は溺甘副社長の独占欲を拒めない
木下さんはいい人そうで、ホッとしたけど、問題は副社長。
どんな人だろう・・・
怖い人だったら、どうしよう。

その時、部屋のドアが開いて、1人の男性が入って来た。
「今日からお世話になります、青野です。宜しくお願いします」

私は、副社長が入って来た早々、頭を下げて挨拶をした。
「こちらこそ。初めましてじゃないよね、青野さん」
「えっ?」
頭を上げて、よく顔を見ると・・・

「あっ、あの時の・・・」
副社長は、面接当日、怪我をさせてしまった、イケメン男性だった。

「その節は、申し訳ありませんでした!」
「あぁ、怪我の事は気にしないで。可愛い絆創膏のお陰で治った、と言いたいところだけど、俺がこの絆創膏は流石にね・・・」

引き出しを開けると、私が渡した絆創膏を取り出して見せてくれた。
「副社長にくまの絆創膏!?それは、可愛すぎですね」
木下さんがクスっと笑っていた。

「青野さん、俺に気を使わなくていいよ」
「もうお出掛けですか?」
「えぇ、青野さんの顔を見に来ただけだから」
そう言って、私に微笑み掛けた。

見た目だけじゃ無くて、優しいんだ・・・
「い、いってらっしゃいませ」
私が頭を下げると、
「あぁ、行ってくるよ。明日から宜しく」
さりげない言葉と、ゾクッとするような声にドキドキしながら、その背中を見送った。

「カッコいいでしょ、副社長」
「は、はい。それに、優しさがさりげないといいますか・・・」
「30歳独身、イケメンで、仕事はやり手。初めは優しく感じるからモテるの。でも、気持ちをストレートに伝えるから・・・歯に衣着せずってやつね。そのうち、それが冷たいって思うみたい」
「そ、そうなんですね」

そうか・・・私なんか、直ぐにズバッと、色々指摘されそう・・・
「副社長と対等に話をする女性は、取引先の令嬢で、幼馴染みの皐(さつき)さんくらいかしら。付き合ってるんじゃないかって噂だけど」

幼馴染みで、取引先の令嬢。
まさに、恋物語の主人公達みたい。
「仲が良いだけじゃ無く、凄く信頼し合ってるから、本当かもしれないわね」

そうだよね・・・
あれだけの人だから、彼女がいて当たり前か・・・
ちょっと残念だけど、私にとって副社長は上司。
ドキドキばかり、してられない。
< 5 / 109 >

この作品をシェア

pagetop