厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています

新たな皇妃候補(2)

       *

 二週間後、皇太后の言葉どおり、シルビア姫が到着した。
 護衛の兵士のほか専属の侍従が五人も付き添い、部屋に入りきれないほどの自前の服飾品、そして帝国への貢ぎ物を山ほど持参しての、華々しい来城だった。

 それよりなにより人々の注目をさらったのは、シルビア姫のたぐいまれな美しさ。
 年齢は、フランと同じくらいだろうか。ほっそりとした身体を包む、上品な薄紫色のドレス。発光しているかのように透明な肌に、月の女神を彷彿とさせるプラチナの髪。澄んだ泉のごとき青い瞳に、ほんのりと桃色に色づいた頬と口元は愛らしく、指の先までたおやかだ。

「帝国の偉大なる母、ヴィクトリア皇太后様。輝かしき天上の星、ライズ皇帝陛下。メディス王家第三王女、シルビアがご挨拶を申し上げます」

 重臣や主たる帝国貴族らが集められた謁見の間で、臆することなく堂々と礼儀作法をこなす完璧な淑女の姿に、フランはただ見惚れるしかない。それはこの場にいるすべての傍観者に共通していたようで、各所から感嘆の吐息が聞こえてきた。
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