厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 シルビア姫はフランに背を向けると、止めを刺すかのように鋭い言葉を残した。

「それに……どちらにせよライズお兄様は、あなたを選ばないでしょう。あなたは皇妃になる器ではない。初対面のわたくしから見ても、はっきりとわかります」

(えっ……?)
 反論もできず、呆然と立ち尽くす。

 至らない点なら、いくらでも思い浮かぶ。フランとシルビア姫の格の違い、皇太后や周りの人々からの人望の差、ひょっとしたらどうしようもできない素質もあるかもしれない。
 けれど、そうわかってはいても、こうもはっきりと突きつけられては心が傷つくし、ショックだ。どうしたらいいのか、救いはあるのだろうかと途方に暮れてしまう。

 だってもう、いくら自分の立場を理解していても、おとなしく諦めることができないくらいライズを好きになってしまっていたから。彼の声が好きで、笑顔が好きで、そばにいたいと願ってやまないのだ。
 頭の中は真っ白で、考えがまとまらない。全身が氷水に浸かったように冷えていく。

 皇妃の器とは、どうしたら身に着けられるものなのだろう。姫が立ち去っていったあとも、ずっとそのことに気を奪われ、心ここにあらずの状態が続いた。帰路の記憶すら曖昧で、どうやって離宮に戻ったかも思い出せないほどに。
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