厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
(どうして私だけ、皆と違うのかしら……)

 家族からの長い説教のあと、予想どおり離れの宮で謹慎するよう命じられたフランは、何度となく使用したことのある居室の窓辺から茜色の空を眺めて、寂しさを紛らわせていた。

 お供もつけられず放り込まれた、ひとりぼっちの閉鎖空間。

 王城の敷地内にあるとはいえ、森の奥に隠すように作られ、普段は使われることのない廃された宮殿。とても王族が使うような場所ではない。

 もう頭上の耳も引っ込んで、恥ずかしくない姿に戻ったのに……そうまでして人目にさらしたくないと家族から思われている自分を、フランは情けなく、悲しく思った。

 シャムール王国は、先祖に獣人族を持つ者たちが集まって興した国だ。
 遠い過去には、人から獣へと自由に姿を変えたり、鋭い嗅覚や聴覚をもって「我らは世界で一番強い種族だ」なんて偉ぶったりもしていたらしい。

 その傲慢さが原因で、獣人は武器を持った人間たちによって乱獲され、絶滅の危機に瀕することになった。捕まった獣人たちは、見世物にされるか奴隷同然の扱いをされて、悲惨な目に遭い、散っていったと記録されている。

 こうした失敗から、この国では先の時代は黒歴史とされ、稀に現れる「先祖返り」は、国を滅亡へと導く不吉な存在と見なされていた。
< 2 / 265 >

この作品をシェア

pagetop