厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 弟の性格はよくわかっていて、信頼もしていたし、彼が無実であることも理解していた。
 ライズが皇帝として即位したのち、ルークは補佐官となり、そばで支えてくれる――そんな未来を想像したこともある。だが時代の流れが、最悪の結末を引き寄せてしまった。
 ルークは、ここまでよく持ったほうだと思う。体は病魔と毒に蝕まれ、息をするだけでも辛いはずだ。
 苦しみながら、人知れず森の奥で孤独な死を迎える。それが、政権闘争に破れたものに与えられた罰。
 だがこのタイミングで、まさかフランが接触してしまうとは思わなかった。

「フランが、ルークと会っていたようだ」

 なぜか苦い思いになりながらそう告げると、クリムトは目を見開いて「は」と驚いた声を漏らした。

「森に仕掛けた魔道具の効果により、普通の人間なら無意識に立ち入りを避けるはずなのですが……フラン様には効かなかったのでしょうか」

 原理はもうどうでもいい、とため息を漏らす。
 先ほどは仕事に手をつけるより前にフランに会いにいったのに、本人は不在。しかも、弟と会っていたとは想像もしなかった。
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