厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 妹王女のマーガレットが、フランの首元のネックレスに目をやりながら、ぼそりと言った。

「フランお姉様、すごくいい暮らしをさせてもらっているのね……」
「そんな馬鹿な……皇帝の容姿も待遇も、聞いていた話と全然違うじゃない……」

 口惜しいとばかりに睨みつけてくる母の姿に、フランの心は萎んでいった。とても再会を喜ぶ雰囲気ではない。
 よく見れば、彼らは一国の王族であるにも関わらず、周りの貴族たちに比べて質素な装いをしているように見受けられる。帝国に下った属国であることから、あまり贅沢をすることができないのだろうか。
 家族に申し訳ない気持ちになり肩を落としたフランは、気分を害してしまったことを含め、遠回しに謝った。

「あの……ご心配をおかけし、申し訳ありませんでした……」
「本当ね! 自分だけいい暮らしをしていたなんて、とんだ恩知らずだこと」

 不機嫌にそっぽを向いた母に代わり、父が声をひそめて状況を尋ねてきた。

「それでフラン。首尾はどうなのだ? その様子だと、皇帝とお近づきになれたのか?」
「いえ、それは……」

 すっかり自信を奪われ、視線を伏せて告げると、母と妹のこちらを小馬鹿にしたような笑いが飛んでくる。

「そうでしょうね。おまえ程度の魅力ではお声がかからなかったのでしょう」
「お姉様じゃ無理よね。フフッ」
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