厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
「ライズ様の瞳の色と同じ……」
「世界でも希少な、深紫の色を持つダイヤだ。私だと思ってくれると嬉しい。この石にはわずかだがマナの力が宿されている。もしものときには盾となり、その身を守るだろう」

 そんな貴重なものが、自分の指にあるなんて。なによりライズから指輪を贈られたという事実がこの上なく幸せで、天にも昇る心地だ。けれども身に余る光栄のようにも思えて、頭の処理が追いつかない。
 そのうちに立ち上がったライズは、フランに会場にも目を向けるよう促した。おそるおそる広いフロアに視線をやると、大きな歓声と拍手が上がり、祝福が身を包む。

 中には、不満を持つ人もいるだろう。これから反対や苦情も寄せられるかもしれない。けれどそれは障害にはならない。認められるよう努力するだけだ。
 それでも慣れぬ注目に圧倒され動けずにいると、ライズが笑って肩を抱き寄せ、支えてくれた。慣れ親しんだ温もりをそばに感じて、じわりと実感が湧いてくる。

(ライズ様……本当に私を選んでくださった――)

 フランの表情は、いつしか花開くように愛らしくほころんで――それから堰を切ったように涙が零れ出した。お化粧が崩れてしまうと気を揉みつつも、盛り上がる感情の奔流を抑えることはできなかった。
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