厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 続いて蜂の巣をつついたように、周りの令嬢たちが喚き立てた。

「抜け駆けよ! 許せない!」
「ぼさっとした田舎娘だと思ったのに、だまされたわ!」

 陛下はそういうつもりで呼んだのではなく、ただ一緒にお茶を飲み、いくつか質問をされただけなのだと説明しようとしたが、激高した集団は聞く耳を持たない。口々にフランを罵り、あらゆる種類の暴言をぶつけてくる。
 ぎゅっと体を縮こまらせ、受け身に徹するしかなかった。入ったばかりの離宮で、頼れる相手もいない。嵐が過ぎるのを待つしかないのだ。

 誰の声も聞き取れないほど荒んでしまった空気を、カーネリアが合図をしていったん静めた。それは怒りが冷めたからというわけではない。これほど混乱を極めていては、話が進まないからだ。
 カーネリアは頬を引き攣らせながら、低く凄むような声で確認を入れてきた。

「陛下はクールなお方ですもの……食事に誘われたわけではなく、事務的な用事があって呼ばれた。そういうことね?」
「は、はい、そのとおりです」

 渡りに船と差し出された言葉に飛びつく。するとブルーネル侯爵令嬢とコーラル伯爵令嬢が、

「カーネリア様! そんな女の言うことなど、信用できませんわ!」
「そうですわ! 厳しく躾けなくては!」

 などと言って、すかさず野次を飛ばしてくる。
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