厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 クリムトの手がフランの額の前で静止し、瞼の上に影を作った。
 フランはなんとなく目を瞑り、じっと動かずに様子を見る。

 やがて瞼の裏が淡く発光したような感覚にとらわれ、なにか温かいものが体の中に湧き上がってくるのを感じた。体に染み渡るような、優しいエネルギーだ。

「どうだ?」

 ライズの声がして、ぼうっとしていた意識が引き戻された。
 目を開けると、クリムトはもう手を引っ込めていて、体の中に感じた温かな力も消えていた。どうやら調べ物は終わったらしい。

「やはり思ったとおり、彼女はマナを発しています……。体内でマナを作り出しているのでしょうか? 獣人にそんな力があるとは聞いたことがありません。信じられない……」

 ぶつぶつと小声で呟きながら、夢中で思索にふけっている。横にライズがいることも忘れている様子だ。
 クリムトの変貌ぶりに戸惑っていると、ライズが苦笑しながら言った。

「こうなると、私でも手に負えん。分析結果は、彼が落ち着くまで待つとしよう」

 フランも一度部屋に戻るように言われ、その場を下がった。
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