縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
「でしょう? この菜園ではどんな果物や野菜でも上手に育つの。これを村に持っていけば村はもっと潤うんじゃないかと思ってる」
「そうかもしれないけど……」

「だけど私は神様の生贄になった身。とても自由には動けないの。だからここに菊乃がいてくれればとても助かるんだけど」
村に運んだ作物は村で食べてもいいし、よそに売りに行ってもいい。

どっちにしても、この村の人たちなら結意義な使い方をしてくれるはずだ。
切神がくれた不思議な果物を持って行くことはできないけれど、育った野菜なら村へ運ぶこともできる。

「私は嬉しいけど、でも」

菊乃の視線が切神へ向かった。
菊乃がずっと気にしていたのは切神の存在だったのだ。

「お願いします旦那様。菊乃はよく働くいい子です」
始めて薫子から『旦那様』と呼ばれた切神は明らかに動揺を表に出した。

顔を赤らめて目を見開いて薫子を見つめている。
やがて負けたという様に嘆息した。
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