縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
居住まいをただして、切神の前に座る。
「この村には盗賊がおります。その盗賊を追い払ってほしいのです」

神様相手ということで、自然と丁寧な言葉遣いになる。
頭を下げてお願いする薫子に切神は顎を撫でた。

「その盗賊はもう長いあいだ村にいるのか?」
「はい。かれこれ一月ほどになります」

「そうか」
「あの、今までも村の人たちがここへ縁切りのお願いをしに来ているはずですが、神様には伝わっていませんでしたか?」

薫子の質問に切神は渋面を作って頷いた。
「つい先日まで出雲にいたからな。ここのことがおろそかになってしまった」

「出雲に? なぜ?」
「10月は神無月。すべての神々は出雲に集うんだ」
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