縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
そのまま静止した。
「あ、あの……」

このままでは本当に眠ってしまいそうだったので、薫子は思わず声をかけた。
「どうした? まだ眠くないのか?」

「いえ、そうじゃないですけど……」
着物を来たまま床に寝たので、昨日は寝た気がしていない。

すぐにでも眠ってしまいたかった。
「私は生贄としてここへ来ました。眠ってしまってもいいんでしょうか?」

自分が考えていることを素直に聞くと、切神は一瞬目を見開いて薫子を見つめ、それからふっと口元を緩めた。
常に鋭い刃物のような顔をしていると思っていた切神の不意の笑顔に、薫子の心臓がドクンッと高鳴る。

自分の顔がカッと熱くなるのも感じた。
「そうか。そんなことを気にしていたのか」

切神はそう言いながら少しだけ薫子に身を寄せた。
顔がグッと近づいて薫子は視線をそらす。
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