縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
☆☆☆

それは着ているのに着ていないような軽さだった。
とてもあたたかく、だけど熱くなると涼しさを感じる。

不思議な着物だ。
「着替えました」

薫子の声に振り向いた切神はほぅっとため息をはいた。
赤毛を纏め上げてカンザシを差し、照れて顔を赤くしている薫子はまさに赤に魅入られた女性だった。

これほど赤が似合う人をみたことがない。
「思っていた通り、綺麗だ」

「やめてください。私なんて」
「もっと自分に自身を持て。薫子は私の妻だ」

切神は薫子に言い聞かせるように何度も『妻』という言葉を使う。
決して生贄などではないと心に刻み込ませるように。
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