恋愛教育のススメ〜イケメン副社長はド天然?教育係を任せれましたが地位は要らないので解放して下さい〜
事務所のデスクに座り事務の前島さんがそっと暖かい砂糖入りのコーヒーを置いてくれる。

「風邪引きますから暖かくして下さいね」

優しい心遣いに癒されて両手でカップを持ち芯から冷えた身体を暖める。

(あっ、ジャケット…)

副社長に返すのを忘れそのまま戻って来てしまった。

「後で副社長室に届けるか…」

秘書に会うのも面倒で帰る時に届ける事にして“○○様連絡下さい”の付箋の山を一つずつ潰していく作業を始めた。

「チーフこれも今日中にと東海出版様から連絡が…手伝いましょうか?」

時間はすでに18時を回ってるから前島さんは就業終わりの時間。

「もう!早くお子さんのお迎え行かなきゃ」

「すみません」と何度も頭を下げる彼女に気持ちは頂いて東海出版のメールに目を通した。



「はい、今週中に連絡致します。それでは失礼します」

相手が切るのを確認して私も受話器を置き「終わったー!!」と背伸びする。
山のように貼っていた付箋は5枚程に減り今日出来る物は無い。

「そして誰も居なくなった…」

フロアは既に誰も居なくて暗くなった周りを見渡した。

後ろの椅子に掛けていたジャケットが目に入り慌ててパソコンの電源を落としてフロアを後にした。

すっかり忘れてた。
19時くらいに持って行けば誰も居ないかなーとか後回しにした結果22時。

上層フロアをID解除をする事になる為警備に連絡して副社長室行きへの許可を取り急いで上層部フロアへ向かう。

フロアの入口で社員IDをかざしピッと言うドアの解錠音にノブを回して入るけど丸山秘書は当たり前だがもう居ない。

「失礼しまーす」

フロアを素通りして奥から二番目の部屋に近づくと仄かに扉の下から漏れる光に扉をノックした。

シーンとして返事がない。

「入りますよ」

一旦声を掛けて扉を開くと私の目にぐったりと来客用のソファで項垂れる彼を見つけた。

「副社長!!」

急いで近寄り身体に触れると

「凄い熱…」

肩を軽く揺らしてもビクともしない副社長をソファに寝かし警備に連絡しようと携帯を取り出した。

「白石さん…やめて…下さい」

気がついた副社長は力ない声で私を静止する。

「でも…」

「大丈夫…ですから。誰かを呼ばれると…困…る」

ゆっくり起き上がり立ち上がろうとしても上手く立ち上がれずテーブルに手を付いた。
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