甘く優しくおしえて、ぜんぶぜんぶ。
「おまえ犬歯あんのな。…俺これスゲー好きかも」
「うあ?」
もしかして牙みたいなやつ…?
小さい頃から前歯の3番目に尖った歯があるから、吸血鬼だぞ~!とかよく言ってました犬丸。
「…ふっ」
甘く微笑んだ一条くん。
は、どいうわけなのか犬丸に顔を寄せてくる。
一条くんのハイクオリティなルックスがゆっくりゆっくりと。
彼にしか似合わないと思わせてくる明るい髪色と、右耳ふたつ、左耳ひとつのピアス。
ごめんねルキくん。
不埒な犬丸をどうか許して。
「ねえ千明。僕たちもいること完全に忘れてない?」
「……これはまだ早いか」
「わんこちゃんも鼻血だけは勘弁して」
ピタリと止まって、頭ポンポンに変わった。
「とまあ、泣いてた理由が親知らずで良かった。…あんなことで泣くような犬丸じゃねーもんな」
「……うい」
とか言っておきながら犬丸。
なんとその後、2度目の逃亡を図る───。