本当の復讐
スタア誕生
マルクは、私につきっきりで、ずっと勉強もスポーツも面倒をみてくれて、オーディション当日は、事務所の前まで付き合ってくれた。

私たちが住んでいるのは、東京までは鈍行でも行ける距離とはいえ、田舎なので、子供だけで東京に来たのは初めての経験だ。

「すぐ近くのカフェで待ってるから」

「やだ、なんか緊張してきた…」

「大丈夫。史奈にとって何より大事なのは、自分に自信を持つことだよ」

その言葉を胸に、私はオーディション会場へ向かった。

審査員にあれこれ聞かれ、落ち着け、自信を持てと、自分に言い聞かせながら、ひとつひとつ、誠実に答えていく。

言われたように歩いてみたり、ポーズを決めてみたり。

「では、後日改めて連絡します」

そう言われ、会場をあとにしたら、何だか力が抜けてしまった。
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