捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした

小学校を卒業し、中学に入学してもそれは変わらず、周りの女子からアイドルのように持て囃されたが、年頃の男子中学生にとって「可愛い」「綺麗」というのは褒め言葉にはならない。

さらに自分がいないところで繰り広げられる争いごとが恐ろしく、女子とは距離を置いていた。

高校へ入学する頃にはグッと背も伸び、天使のような可愛らしさから彫刻のような美しい青年へと成長すると、周囲の女性たちの反応はことさら過激になっていく。

幼い頃は見た目に惹かれて寄ってくる女子が多かったが、大人になるにつれて亮介の美麗な外見に加え、大企業の御曹司という立場に魅力を感じる女性が増えていき、玉の輿にのりたいという願望が透けて見える女性たちからのアプローチが引っ切りなし。誰も彼も亮介の前では清楚に装っているが、腹の中では凶暴な肉食獣を飼っているように見えた。

告白を断った女性がストーカー化したのは一度や二度ではないし、顔と名前が一致しない女性から婚約破棄の慰謝料を請求されたこともある。

亮介が麗しい見た目とは裏腹に〝堅物〟などと呼ばれるようになったのは、仕方のない話だ。

だからこそ、女性秘書を置くことに初めは抵抗があった。きっと碌なことにならない。惚れられて面倒になるのはごめんだ。

そんな亮介の心配をよそに、新たに副社長秘書となった凛は、媚を売ったり女性を意識させるような振る舞いは一切しなかった。

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