捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした
7.「ずっと君が好きだった」

凛を乗せた海堂家の車が止まったのは、自宅ではなく亮介のマンションだった。

運転手の真鍋いわく、亮介からここに送るように指示されているという。何度か来ているためコンシェルジュが凛の顔を覚えていて、こちらにも連絡がいっていたらしく亮介が預けていた鍵を渡してくれた。

中に入ったものの主が不在の部屋にいるのは落ち着かず、凛はソファに座って足元に荷物を置くと、膝を抱えて小さくなる。

(明日から、どうしたらいいんだろう……)

元々企画部を志していた凛だが、今では黒子のように上司を支える仕事を天職だと感じている。秘書の職を奪われるのは耐え難い上に、なにより新ブランド開発チームが一丸となって作り上げてきた最高のコスメブランドの発売に支障が出てしまったらと思うと気が気ではない。

ここまできて発売中止になるとは考えにくいが、あれだけ類似商品をぶつけられては、発表が後手に回るリュミエールの方が盗用を疑われてしまう恐れがある。

(今頃きっとみんな情報を集めて対策を練っているはずなのに、私はなにもできない……)

しんと静まり返る広い部屋にひとりでいると、ネガティブな考えばかり浮かんでくる。

< 170 / 217 >

この作品をシェア

pagetop