気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす

困ったことにその部分の記憶があまりない。

何か大胆なことをしでかした気もする。


大丈夫だったかな。

歴くんを困らせるようなこと言わなかったかな。

――うっかり『好き』とか、言わなかったかな。



ひとりで顔を熱くしながら、隣でまだ眠っている歴くんを、こっそり見つめる。


お仕事で疲れてたはずなのに看病してくれた。
大丈夫だよって抱きしめるみたいにぎゅっとして、隣で眠ってくれた。

疑いようのない事実が目の前にある。



「………ありがとうございます、歴くん」


声にならないくらいの声で呟いたつもりなのに、野生の獣みに感覚が鋭いのか、歴くんの瞼がうっすらと持ち上がった。


いけない、起こしちゃった……っ。



「……体、どう」

「っえ、あ……昨日よりはおかげさまで、いいです」

「ほんとか? 顔かなり赤いけど」



どきっとする。

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