気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
叶わない約束


.



「黒菊さん、あの蘭野くんと婚約したのっ?」

「すごーい! おめでとう!!」



──────あれから1週間。

蘭野くんとの話はすぐ公になり学校中に広まった。


クラスメイトから祝福の声を受けて、廊下を歩いていてもみんなの噂する声が聞こえてくる。


声をかけられるたびに実感する。

私は本当に蘭野くんと一緒になるんだ……。



歴くんと暮らしていた頃が、もう、ずいぶん遠い日の記憶のように思えてしまう。


……会いたい。

すぐに戻るつもりでいたから、短い手紙で済ませてしまった。


私が出ていったこと、どう思ってるかな。

特に何も思わなかったかもしれない。
忘れられていたらどうしよう。


まろんは元気かな……。


マンションの場所も事務所の場所もわかる。

会いたいなら会いに行けばいいのに、足が動かない。

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