気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
黒菊家の依頼人

side歴
──────
𓆸 𓆸


十五分頃前からなにやら事務所の下が騒がしかった。

怒鳴りつけているような声と、それに縋るような声。

まるで浮気された女と浮気した男の喧嘩のような。


放っておくつもりがだんだん耳障りになってきて、席を立つ。



「歴さん、お疲れ様です」

「さっきから何騒いでんだ」


エントランスにいた男に尋ねる。



「それが、外で歴さんに会わせろってうるさいガキがいるんで追っ払ってるみたいなんすけど、ずっと粘ってて」

「ガキ?」


「です。なんか切羽詰まった感じでしたよ」

「テキトーに脅して帰らせろ」

「わかりました」


男が外に出ていくのを見送って踵を返した。


──────が、ふと、足を止める。


ガキ……。

いやまさかな。

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