それでもキミと、愛にならない恋をしたい

「洋司さんはまだ寝てるみたいだからダイニングで食べてもいいし、ひとりがいいならお部屋に運ぶよ」

 昨日、私は彼女の声掛けをすべて無視したし、お父さんとの口論もきっと聞こえていたはずだ。

 それなのに、私のために朝早くからこうして胃に負担のかからない朝食を作っていてくれたなんて。

「……部屋で食べます」
「うん、わかった。できたら持っていくね」

 どうしてそんなに優しくいられるんだろう。どうしたら人に優しくなれるんだろう。

 昨日の自分の振る舞いを思い返すと、再び落ち込んでしまう。

 二階に上がって部屋の扉を開けたまま待っていると、真央さんが丸い木製のお盆を持ってやってきた。

「お待たせ。たくさんあるけど、食べられるだけでいいからね」

 黒い土鍋風のお茶碗には、ほかほかと湯気の立つおじやがこんもりとよそわれている。鮭と出汁のいい匂いが部屋中に漂い、私は久しぶりに空腹を覚えた。

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