それでもキミと、愛にならない恋をしたい

 私がそう言うと、京ちゃんがハッとして私を見つめた。

「お正月に親戚で集まる時、みんな着物着るから美容室を予約するの。その時のお母さんとか従姉妹たちの髪、私がやってみようかな」
「わぁ、いいかも! みんなきっと喜ぶよ。お父さん、美容師っていうお仕事に関心持ってくれるといいね」
「ありがと。長期戦覚悟で頑張ってみる。菜々は? 進路の話した?」
「うん。帰ってからお父さんに話したよ。まだどこの大学に行くかは決められてないけど、スクールカウンセラーを目指したいって話したら一緒に色々調べてくれた」

 これまで将来の夢を考えたことがなかったけれど、ふと浮かんだことがあった。

 悩んだり居場所がないと感じた時、吐き出させてくれる存在というのは絶対に必要だ。私には辛い時に楓先輩や京ちゃんがいたけれど、大切な人だからこそ話せない時もある。

 学校でもいいし、別のコミュニティでもいい。どこか逃げる場所があって、気軽に話を聞いてくれる人がいたら。例えば、保健室の田村先生が優しく受け入れてくれたように。

 保健室や相談室などの安心できる居場所を作る手伝いがしたい。そう考えた時、一番近い職業がスクールカウンセラーだった。

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