絶縁されたので婚約解消するはずが、溺甘御曹司さまが逃してくれません

 しかし玲良は絢子からいい返事をもらうまで、まだ少し時間がかかると予想していたらしい。自分から求婚した割に絢子の承諾をすぐに理解できなかったようで、動きがぴたりと停止してしまう。

「絢子? ……本当か?」

 おそるおそると言った様子で確認されたので、気恥ずかしい気持ちを押し殺しながらこくりと顎を引く。

「私も、ずっと前から玲良さんが好きです」

 首の動きだけでは伝わらないかもしれない。そう思って声に出して愛を伝えると、玲良もようやく絢子の気持ちと返答の意味を理解したようだ。一見すると感情の起伏が少ないが、よく見ると喜怒哀楽の変化がわかる美しく整った玲良の顔が、幸福の蜜に浸ったように甘ったるく微笑む。

「まだまだ未熟者ですが、玲良さんを支えられるように頑張……」
「絢子」
「ん……っ」

 絢子が決意を表明すると、ただでさえ至近距離にあった玲良の顔がぐっと近づいて――そのまま唇を重ねられた。

 それは恥ずかしくも甘やかなキス。
 唯一無二の感情を示す、愛と誓いの優しい口づけ。

 身体の芯まで熱くなるような、心の奥がぽんわりと温かくなるような、心の底から愛し合う者同士の間で交わされる愛情表現。

「俺を、受け入れてくれるんだろ? ならこのまま……だめか?」
「……だめじゃ、ないです」

 玲良の掠れた声が絢子を誘う。けれどもちろん嫌ではない。
 だからどうにか頷いた絢子だったが、一時間も経たないうちに自分の判断ミスを思い知る。

 溺甘御曹司さまは、今夜も、これから先も、ずっと絢子を逃がしてくれないのだから。


  ――Fin*

< 66 / 66 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:359

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

幼なじみの過保護愛 -星のかけらは純愛のしるし-

総文字数/31,994

恋愛(純愛)47ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
会社勤めの池田咲は、高校時代、部活中に幼なじみの本庄光希が蹴ったボールが当たって目に怪我を負った。以来、責任を感じた光希から過保護に守られる日々を送っている。 傍にいてくれることが嬉しい。 ただの『幼なじみ』以上の関係になりたい。 ――でも自己犠牲はしてほしくない。 秘めた気持ちを伝えられず『幼なじみ』という微妙な距離感を保っていた二人だが、ある日同僚から『本庄くんに連絡先を渡してほしい』と頼まれ、さらに同期の男性社員から『池田と二人きりで過ごしたい』と誘われる。 恋心に揺れ動く咲の感情に気づいたとき、光希がとった行動は―― ◆ 設定はすべてフィクションです。実際の人物・企業・団体には一切関係ございません ◆ 表紙は「かんたん表紙メーカー」さまで作成しています ◆ エブリスタにも投稿しています
御曹司さま、これは溺愛契約ですか?

総文字数/212,637

恋愛(純愛)329ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
*Story* 秋月 美果が勤務する 『天ケ瀬百貨店東京』には、 本社の営業本部長・天ケ瀬 翔が ときどき視察に訪れる。 完璧な御曹司である翔を 遠い存在だと感じていた美果だったが、 別の勤務先に翔がやってきた際に、 偶然 彼の『裏の顔』を知ってしまう。 トラブルに巻き込まれたくないと 翔を避ける美果だったが、 とある事情から美果が お金を稼ぎたがっていることを知ると、 翔から突然『俺の専属家政婦になれ』と 雇用契約を持ちかけられて――? ―――――*――――― 百貨店経営グループ本社 営業本部長 御曹司 天ケ瀬 翔 31歳 Amagase Sho × 3つの仕事を掛け持ちする苦労人 秋月 美果 25歳 Akizuki Mika ―――――*――――― *開始 : 2024.10.23.* *完結 : 2024.11.20.* ◇ 設定はすべてフィクションです。実際の人物・企業・団体には一切関係ございません ◇ アルファポリス・ムーンライトノベルズ・エブリスタにも掲載しています
社長、それは忘れて下さい!?

総文字数/132,816

恋愛(オフィスラブ)222ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
上司である社長の龍悟に長年想いを寄せる 秘書の涼花には、人には言えない 恋愛出来ない秘密があった。 それは『自分を抱いた男性は その記憶を失ってしまう』こと。 心に傷を負った過去から 恋愛のすべてを諦めていた涼花は 慕い続ける龍悟の傍で仕事が出来るだけで 十分に満たされていた。 しかしあるきっかけから 過去の経験と自らの不思議な体質を 龍悟に話してしまう。 涼花は『そんな話など信じる訳がない』 と思っていたが、話を聞いた龍悟は 『俺は絶対に忘れない。 だから俺がお前を抱いてやる』 と言い出して―― !? ------ ◆ ------ グラン・ルーナ社 社長 一ノ宮 龍悟 33歳 × 上司に想いを寄せる秘書 秋野 涼花 27歳 ------ ◆ ------ 本編&番外編 : 2021.09.10. * 設定はすべてフィクションです。 実際の人物・企業・団体には一切関係ございません。 * ノベルバにも掲載しています。 また、アルファポリス・エブリスタにはR18版を掲載しています。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop