あなたと想いが通い合う日を私、……ずっと待ってたはずなのに

第2話 諦められない

 俺は昨日失恋した。

 菜保子に振られることなんて考えてなかった。

 いや、少しはよぎったけども。

 俺は菜保子が俺のことを好きでいてくれているのかと思ってた。
 告白したら喜んでくれるのかと思っていた。

 俺は自分の部屋のベッドで仰向けになり天井をじっと見ていた。

 不覚にも涙が出そうになっていた。

 俺の独りよがりだったんだな。

 俺は菜保子が好きだ。

 勇気を振り絞って長年の想いを打ち明けたのにな。

 毎日毎日、いつ菜保子に告白するか悩んで悩んでさ。
 どういう言葉で俺の気持ちを伝えようかと何度も練ってはやめたりして。

 小5の時から好きだった。
 気づいたら好きになってた。

 同じバスケ部の男子が菜保子のこと好きだって聞いて焦った。
 
 あいつの一番近くにいる男は俺だって思ってた。

 他の奴なんかに絶対に渡したくないって思った。

「菜保子はバレンタインデーだって毎年俺に手づくりチョコをくれてたじゃないか」

 いつも菜保子は恥ずかしそうに赤い顔をしながらチョコを渡して来た。
 すごい嬉しかったのに。

 そりゃあ「好きだよ」とか言葉は何もなくて。

『はい、あげる』

 菜保子の顔が浮かぶ。

 俺は枕を天井に向けて投げつけた。
 ボスンッと俺の顔に落ちてくる。

「すげぇ、情けねえ」

 すげえ勘違い。
 菜保子も俺のこと好きでいてくれてるって思ってた。
 あっさり振られた。

 何年も思い続けて来たのに人を好きな気持ちってこんなに脆《もろ》いものなんだ。

 あんなにはっきり友達宣言されちゃあどうしようもないよ。

 諦めるしかないかな。

 菜保子の笑顔が好きだ。

 俺の好きな菜保子の笑顔を近くで見てたい。

 誰かと付き合っちまったら菜保子ともう気軽に話したり一緒に帰ったりも遊びにも行けない。

 電話も?

 ちょっとハンバーガー食べに行こうぜとか誘うと菜保子は喜んで付き合ってくれる。

 去年は二人きりで夏祭り行ったじゃん。
 ドキドキした。

 手ぇ、繋いだ。

 ……諦められないや。

 あっ! 俺、昨日、菜保子を抱きしめちまったな。

 手を握るどころじゃない。


 振られたショックで霞《かす》んでた事実を思い出した。

 俺はなんて大胆なことしちゃったんだよ!

 菜保子は柔らかくていい匂いがした。

 振られたのに。
 こんなに辛くて哀しいのに。

 俺はまだ付き合えないと言った菜保子の言葉が信じられないでいた。
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