あなたと想いが通い合う日を私、……ずっと待ってたはずなのに

第9話 大地の想い

 沈黙が俺と花園の間にずっとあった。

 俺は花園に何を言えば良い?

 分からなかった。

 友達として花園のことは大事に思ってきた。
 だけど俺は花園が菜保子についたその嘘だけは許せる気がしなかった。

 花園が菜保子を好きなことには随分前から気づいてた。

 菜保子を見つめる視線が熱すぎて俺はこいつは菜保子に恋をしているなと勘づいていた。
 俺にとってはライバルなんだと少なからず意識した。

「花園はそんな嘘で俺と菜保子の関係を壊すのか?」
「男のあんたには分からないわよ」

 花園は泣いていた。
 俺は花園に手を差し伸べることも慰めることも躊躇っている。
 だって花園は恋敵の俺のことを憎んでいる。

「女の私は菜保子を好きになっちゃいけないの? 大地君は笑ってんでしょ? みんなに言いふらしなさいよ。私は女なのに女が好きだって」
「なんで俺が言いふらすんだよ? 大事な気持ちだろ?」
「いい人ぶんないで! 私が菜保子と大地君の気持ちを引き裂いたのに」
「言うならとっくに誰かに言ってる」

 俺は菜保子に会うのをやめた。

 もう一度告白しようと思って菜保子のところに来た。

 ちゃんと俺を見て欲しくて。

 付き合いたいと思うのは俺の方だけなのか?

 菜保子に俺と向き合ってって。

 昨日の失恋は痛かったけど今まで一緒に過ごして来たから分かる。

 菜保子は俺のことただの友達以上に思ってくれているんじゃないのか?

 俺が弱っている時は菜保子はいつもそばにいて。
 俺の哀しみを菜保子は感じ取ってくれる。

 あたたかい菜保子が好きだ。

 花園がここにいたんじゃ今日は菜保子に伝えることは出来ない。

 俺は帰ろうと思った。
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